
2020年12月23日公開
コンプライアンスとは?企業が行うべき取組みや違反事例を把握しよう
コンプライアンス違反は企業の存続を脅かす恐れのある、決して起こしてはならない行為です。
近年多発している企業の不祥事報道によって、コンプライアンス遵守の取り組みを進める企業も増えています。しかしその一方で、
「コンプライアンスってなんとなくわかるけど、詳しい意味はよくわからない」
「違反行為を防ぐためにできる取り組みって何があるんだろう」
「実際の違反事例に身近な例はあるんだろうか」
このような疑問が浮かんだことはありませんか?報道される内容を聞いているだけでは不明な点も多く、疑問が解消されない方も多いかもしれません。そこで今回は、下記の項目を中心に解説します。
・企業が行うべきコンプライアンス遵守への取り組み
・コンプライアンスの違反事例
気になる項目を読んで改めて理解を深めることで、違反を防ぐ取り組みを具体的に検討できます。
遵守すべき内容や違反になり得るリスクを把握したい方や、違反を起こさせない取り組みを行いたい方はぜひ参考にしてください。
目次
コンプライアンス(コンプラ)とは
コンプライアンスの概要について、以下の4つの項目に沿って詳しく解説します。
・コンプライアンスの意味
・コンプライアンスが重視されている理由
・CSRとコンプライアンス経営
・リスクマネジメントとコンプライアンス経営
企業におけるコンプライアンスの意味について改めて理解を深めましょう。
コンプライアンスの意味
コンプライアンス(Compliance)は直訳すると、「応じる」「従う」などといった意味で用いられます。日本では、「法令遵守」と訳される場合もあります。
しかし、ビジネスや経営分野においては「法令遵守」という意味だけではありません。
企業経営におけるコンプライアンスは、法令はもちろんのこと社会的規範や企業理念を守り、モラルある行動をすることを示します。
企業は法令遵守と道徳的な行いによって、適切な営利活動を実現できるでしょう。
コンプライアンスが重視されている理由
社会的信頼の獲得や継続的な発展を実現するために、企業はコンプライアンスを重視する必要があります。
なぜなら、法令や社会的倫理を遵守した企業活動によって、消費者や投資家など企業を取り巻く存在との信頼関係を築けるためです。
信頼できる企業は社会的にも必要とされ、より良い成長を目指した活動を継続的に行えます。ルールやモラルを無視した行為が横行している企業では、社会の信頼は得られないでしょう。
実際に不祥事によって企業価値の低下や倒産となった企業の報道が近年多発していることも、コンプライアンスが重視され始めた理由の1つです。
そのため、企業には信頼の獲得や継続的発展のために、コンプライアンスを重んじた行動が欠かせません。
CSRとコンプライアンス経営
コンプライアンスは、CSR(企業の社会的責任)の取り組みの一環と捉えられています。
CSRとは企業が利益を追求するだけでなく、社会へもたらす影響にも責任を持つことです。そのため、CSRという広義の中にコンプライアンスが含まれています。
CSRの活動にはその他にも、地域への貢献活動や消費者への保護活動、環境保全活動などが含まれています。
コンプライアンスは法令遵守だけでなくモラルを守った活動を行うことで、社会的責任を全うするためには最も基本的な活動です。
そのため、コンプライアンス遵守の他にもCSRの取り組みとしてどんな活動ができるのか、企業ごとに検討し取り組むと良いでしょう。
リスクマネジメントとコンプライアンス経営
コンプライアンス遵守のためには、違反の危険があるリスクを確認し制御するリスクマネジメントが必要です。
コンプライアンス違反につながるようなリスクは、さまざまな場面に潜んでいます。そのため、リスク全てを完璧に回避することは容易ではありません。
さらに今あるリスクだけでなく将来のリスク予測や違反事例の再発防止など、違反を防ぐためには幅広い対応が必要です。そのため、適切なリスクマネジメントは、法令を遵守したモラルある企業活動の実現に不可欠な取り組みであると考えられます。
コンプライアンス経営の実現を目指す際には、同時にリスクマネジメントの運用についても検討しましょう。
コンプライアンス遵守に向け企業が行うべき取り組み
コンプライアンス遵守を実現するために、行うべき取り組みとして以下4つを紹介します。
・監査機関の設定
・社員への教育機会の提供
・相談窓口の設置
それぞれの必要性について解説するので、自社に必要な取り組みを押さえておきましょう。
行動規定の制定
法律や条例への遵守はもちろん、投資家、株主、取引先、社員、社員家族、地域社会と、企業が関わるすべてに対する行動規範を定めましょう。
行動規定の制定は、具体的な言動や注意すべき行動が明確となるため社員も取り組みやすくなります。
さらに法令遵守に関する内容だけでなく企業と関わるすべてに対する行動規範は、企業が置かれている社会での信頼向上につながります。
また制定された行動規定は、どんなに内容が素晴らしくても推進され実行されなければ意味がありません。そのため、制定と同時に社内における行動規定の共有にも努めることが重要です。
監査機関の設定
第三者によるチェックによって正確かつ、早期に問題やリスクを発見でき、速やかな対処が可能となります。
社員が各々で自身の行動を気をつけようとした場合、個々の価値観や意識の差によって気を付ける言動にもバラつきが見られます。
その結果、企業全体としてのコンプライアンス遵守に向けた行動の統一は図れません。
監査機関の設定は第三者によって公平に社員の言動を確認できるため、リスクや違反事例を正確かつ早期に発見することが可能です。
リスクを予測できた際には、速やかな対応によって違反事例となる前に危険因子を取り除くことも期待できるでしょう。
監査機関のチームは、社内の人間をメンバーとして結成する場合もあります。または、社外における専門の監査機関に委託することで、より正確なチェックや公平を保った調査が可能となるでしょう。
社員への教育機会の提供
社員一人ひとりが正しい知識を身につけることで違反を起こさせない取り組みも重要です。
なぜなら、行動規範に示すような事例だけに気をつけていても、コンプライアンス遵守の徹底は困難であるためです。
違反のリスクはさまざまな場面に潜んでいるため、行ってはいけない言動や気を付けるべき言動の知識に加え、どうしていけないのかという問題の根本を理解する必要があります。そのため、社員に正しい知識を学んでもらうことを目的とした研修など、教育機会を提供するよう努めましょう。
具体的には、行動規範に示した事例がなぜ定められたのか、どういった視点を持って日々の業務に取り組む必要があるか、などといった内容が挙げられます。
「顧客はどう思うか」「地域住民にとってはどう感じるだろう」といった第三者視点を持つと、行動規範の事例をより深く理解できます。
コンプライアンスの根本を理解できる教育によって、社員一人ひとりが違反を起こさない言動や行動を心がけられるでしょう。
相談窓口の設置
社員が相談しやすい環境を整えることによって、コンプライアンス違反を未然に防ぐ可能性が高まります。
社員は違反事例かもしれないと気づいても社内の人間関係を気にかけてしまい、なかなか他者に相談できず見て見ぬ振りをしてしまう場合もあるでしょう。
このような環境では、気づいた時には問題が重大なものとなり、取り返しのつかない事態になってしまう恐れもあります。そのため社員が違反に気づいた際には速やかに相談や報告ができる、相談窓口の設置がおすすめです。
オンラインや電話での受付けを可能にするなど、社員にとって相談しやすいと感じてもらうための運営の工夫も必要です。
コンプライアンス違反事例
実際に起きたコンプライアンスの違反事例を3つ紹介します。自社でコンプライアンス違反が起きなよう、あらかじめいくつかの違反事例を把握しておきましょう。
情報漏洩
2019年8月、株式会社セブン・ペイが運営していた決済サービス「7pay」が、不正アクセスによる個人情報漏洩の発覚によってサービス廃止を決定しました。
サービス開始からわずか1ヶ月で800名以上の利用者が被害に遭い、被害額は約3800万円と大きな損害が報道されました。
キャッシュレス化が進む中でコンビニ大手の傘下会社が始めたサービスともあって、多くの人々が安心して利用を始めたことが伺えます。しかし結果として、経済的損失だけでなく多くの人々からの信頼も失うこととなりました。
さまざまな企業が利用者の個人情報を扱う中で、情報管理能力の欠落、セキュリティの不十分さによって重大な損失を起こしてしまう可能性が伺えます。
粉飾決算等の不正会計
2018年1月、振袖の販売やレンタルサービスを行っていた「はれのひ」が突如店舗を閉じ、利用者からの利用を受付けない事態が発生しました。成人式を目前に控えた突然の事態に多くの新成人が被害に遭い、問題の真相に注目が集まりました。
事態の原因は売上高を粉飾した不正会計であり、返済が不可能だとわかっていながらも売上高を粉飾した決済書類によって銀行から融資を受け取っていたことが判明しています。
企業が営利活動にばかりに目を向け、法令遵守から逃れようとした違反事例です。
労働環境
2017年12月に野村不動産の社員による自殺が、労災認定されていたことが発覚しました。
該当社員は数年前から長時間労働が続いており、1ヶ月の残業時間が180時間を超えていたとも報道されています。また社内では裁量労働制の違法適用が横行しており、該当社員もその影響を受けていたとされています。
全社員のうち約1/3の社員に対して裁量労働制が適用されており、社内においては異変に気づいていても言い出せない雰囲気であった可能性も考えられるでしょう。
社員にとって多くの時間を過ごす職場環境では、コンプライアンス違反が重大な事態につながる恐れがあることが伺えます。
まとめ
今回はコンプライアンスについて、下記の項目を中心に紹介しました。
・企業が行うべきコンプライアンス遵守への取り組み
・コンプライアンス違反事例
コンプライアンスは企業の継続的発展や社会的責任を全うするために、欠かせない取り組みの1つです。しかし思わぬところにリスクが潜んでいる可能性や、社員への周知徹底が不十分である可能性など、取り組みを行っていれば安心できるとは限りません。
そのため今回紹介したコンプライアンス遵守に向けた取り組みは単発的に行うのではなく、定期的な確認や見直しも行うよう心がけましょう。
真摯に取り組むことで、リスクを最大限抑えられコンプライアンス遵守の実現に近づきます。
まずは、自社に必要な取り組みを選択し、社員を巻き込んだ活動となるよう努めましょう。